わたしの、センセ
第一章 出会い
-悠真side-
大学の卒業式を終えて間もない3月下旬の平日
新人研修と名のつく学校の呼び出しで、僕は就職した女子高の校長室に呼ばれていた
「え? 僕が2年生の担任ですか?」
僕の他に、この学校には3人の新人教師がいるらしい
だけど今日、呼び出されたのは僕だけだった
肩身の狭い思いをしながら、校長室の革製のソファに座っている
ソファは三人掛けでゆったりと座れるけれど、気持ちが窮屈で…慣れない場所に、身体の筋肉もカチコチに固まっていた
僕の向かい側には校長先生と、2年生の学年主任の先生が、僕とおそろい三人掛け用の革製のソファに座っていた
「これがクラスの名簿ね」とか言われながら、学年主任の飯野先生からどんどんと書類の山を渡されていく
顔写真つきの生徒個人の書類から、去年の先生から引き継ぎの書類など
僕の前のテーブルに、壁のように積み上がった
飯野主任が書類を重ねていくたびに、事務の先生が用意してくれた緑茶が、かすかにコップの中で揺れるのがわかった
「あと…テニス部の顧問もよろしく」
「はい?」
僕は、クラス名簿を膝の上に乗せるなり、校長先生の軽い声かけに、目を丸くした
「テニスの顧問を…ですか?」
「そう。君が適任でしょ」
整えられた黒い髭を指先で撫でた校長先生が、にっこりと笑った
飯野主任も校長先生の言葉に、力強く頷く
「ぼ、僕でいいんですか?」
「だって、君、高校生の頃にテニスのシングルで優勝してるでしょ?」
「はあ…まあ」
僕は曖昧な返事をして、苦笑いを浮かべた
その後すぐに、肉離れとアキレス腱切断を立て続けにやって、テニスはやめたけどね
もう4年もラケットを握ってないのに…いいのかな?
「ま、詳しいことは飯野主任から聞いて。君なら、大丈夫だから」
校長先生がにっこりと笑うと、そそくさと部屋を退出していった
ここ…校長室なのに
校長先生が退出するなんて…僕たちが出ていけばいいことなのに
大学の卒業式を終えて間もない3月下旬の平日
新人研修と名のつく学校の呼び出しで、僕は就職した女子高の校長室に呼ばれていた
「え? 僕が2年生の担任ですか?」
僕の他に、この学校には3人の新人教師がいるらしい
だけど今日、呼び出されたのは僕だけだった
肩身の狭い思いをしながら、校長室の革製のソファに座っている
ソファは三人掛けでゆったりと座れるけれど、気持ちが窮屈で…慣れない場所に、身体の筋肉もカチコチに固まっていた
僕の向かい側には校長先生と、2年生の学年主任の先生が、僕とおそろい三人掛け用の革製のソファに座っていた
「これがクラスの名簿ね」とか言われながら、学年主任の飯野先生からどんどんと書類の山を渡されていく
顔写真つきの生徒個人の書類から、去年の先生から引き継ぎの書類など
僕の前のテーブルに、壁のように積み上がった
飯野主任が書類を重ねていくたびに、事務の先生が用意してくれた緑茶が、かすかにコップの中で揺れるのがわかった
「あと…テニス部の顧問もよろしく」
「はい?」
僕は、クラス名簿を膝の上に乗せるなり、校長先生の軽い声かけに、目を丸くした
「テニスの顧問を…ですか?」
「そう。君が適任でしょ」
整えられた黒い髭を指先で撫でた校長先生が、にっこりと笑った
飯野主任も校長先生の言葉に、力強く頷く
「ぼ、僕でいいんですか?」
「だって、君、高校生の頃にテニスのシングルで優勝してるでしょ?」
「はあ…まあ」
僕は曖昧な返事をして、苦笑いを浮かべた
その後すぐに、肉離れとアキレス腱切断を立て続けにやって、テニスはやめたけどね
もう4年もラケットを握ってないのに…いいのかな?
「ま、詳しいことは飯野主任から聞いて。君なら、大丈夫だから」
校長先生がにっこりと笑うと、そそくさと部屋を退出していった
ここ…校長室なのに
校長先生が退出するなんて…僕たちが出ていけばいいことなのに