わたしの、センセ
-悠真side-

「松浦先生、これどういうことでしょうか?」

飯野主任が、各教科の中間テスト用紙を僕の机の上に叩きつけた

「はい?」

僕は叩きつけられたテストの答案用紙に目を落とした

真っ白な答案用紙の上には、『葉月 さくら』と書いてあった

え? さくらの答案用紙? なんで何も書いてないんだよ

「これはぁ…なんでしょうか?」

僕の質問に、飯野主任の眉がピクっと動いた

「それを私が聞いているんです」

「あ…そうですよね」

僕は答案用紙の全部見てみるが、どの教科も真っ白のまま何も書かれてなかった

僕はまだ採点していない各クラスの答案用紙からさくらのだけを引き抜いた

あれ?

数学はきちんと答えてある

ぱっと見る限り、満点に近いと思うけど

「ちょっと葉月さんに聞いてみます」

僕はさくらの答案用紙の束を受け取ると、クリアファイルにいれた

どうしたのだろう

僕に言えないことで悩んでいるのだろうか?

中学のときも高校1年生のときも、学年で3位以内に入る優秀な生徒だって聞いているよ

そんなさくらが、真っ白な答案用意で提出してくるなんて…絶対に何か理由があるんだろう

僕は終礼をするために席を立つと、さくらの答案用紙が入っているクリアファイルを手に持った

「きちんと理由を聞いてきてくださいよ! 最近、彼女の父親からクレームがなくてほっとしてたのに…今度は本人だなんて」

飯野主任が、苛立たしげに口にした

僕は「はい」と返事をすると、職員室を出ていった
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