わたしの、センセ
夕食の席で、パパが不機嫌な顔で怒っていた

怒っている理由はもちろん…新しくわたしの担任になった先生のことだ

「学校に問い合わせたら、松浦という教師は、今月大学を卒業したばかりの何もわからないヒヨっこ教師じゃないかっ! そんな男が、さくらの担任なんて、何を学校側は考えているんだっ」

パパが文句ばかり、学校に言ってるからじゃないの?

わたしは美味しく夕食を食べたいのに、パパの怒鳴り声で、コックが作った料理がすっかり不味くなった

「まだ新垣という女教師のほうがいいじゃないか」

パパが辞職にまで追い込んでおいて、それはないんじゃないの?

パパは、パパのせいで辞めた…なんて全く思ってないんだろうなあ

「最近の若い子はどうしてこう忍耐力がないのかしら。責任感もないし。最後まで、生徒を見届けようっていう気持ちがないわよねえ」

ママもパパの考えに賛同するように口を開いた

違うでしょ

パパとママが、先生たちを追い詰めてるんだよ

どうして気付かないの?

パパとママの言葉が、まるで刃のように人の心を傷つけてるって、なんでわからないのかな?

言葉ってすごく大事なんだよ?

どうして大人なのに、気付かないの?

言い方次第で、喜んだり悲しくなったり、苦しくなったり

同じ意味の言葉でも、イントネーションや声のトーンで全然違う意味にもなっちゃう

傷つけているつもりはないのに、褒めているつもりなのに…傷つけちゃってることもあるのに

どうしてパパとママは、それに気付いてないの?

わたしは怖くて…言葉が安易に出せなくなった

誰を傷つけてしまうだけの言葉ならいらない

黙っていればいい

こうして食事の席だって、パパとママが勝手に話してて、どんどんと時は過ぎていくから

わたしが話さなくても、時間は過ぎていく

学校でもそう

わたしの言葉がなくても、みんなが話して楽しい会話をしてくれるから

わたしがあえて話す必要なんてないの

いつからだろう

話すことが怖くなったのは……


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