わたしの、センセ
「センセ、やっぱりパパに謝ったほうが…」

「平気だよ、ほら」

センセがわたしに携帯の画面を見せてくれた

『仕事が終わったら、俺の家に来い! 金がないなら、俺のために働け…くそガキ』

「ね!」とセンセが、ウインクをしてくれた

なんて…言葉の悪い相手なんだろう

『俺のために働け』とか『くそ餓鬼』とか

あ…でも、パパも同じようなものだね

うちのパパもセンセにガキって言ってた

「そんな怯えた顔しなくても、あの人は怖くないよ。まあ…言葉は悪いけど、態度もデカいけど…それがあの人の愛嬌だと思えば」

「思えるんですか?」

「んー、あの人の言葉の悪さは愛情の裏返しだよ。逆に、丁寧すぎるときは要注意!」

センセが肩を竦めて笑った

センセが立ち上がると、わたしの額にキスをしてくれる

「大丈夫。僕は負けない。さくらの悲しむ顔を見たくないからね。今度の休み、デートしよっか。婚約破棄の祝いってことで」

「もう先の予定ですか?」

「あの人が動くなら、絶対に成功する。失敗は有り得ない。まあ…僕も兵士として駆り出されるんだろうけど」

「え?」

「あ…ううん。なんでもない」

センセがにっこりと笑って、手を振った

「寝不足にきくドリンクはあるかなあ」

センセが腕を組んで首を傾げた

センセ…わたしは不安です

婚約破棄が本当に実現するんでしょうか?

パパが、権力のある人なんですよ?

気に入らないと、部下だろうか、娘だろうが関係なく手をあげるような人なのに

平気なんですか?
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