わたしの、センセ
―悠真side―

一学期の始業式を迎える前日、僕は教師として初出勤をした

僕の机、僕の教科書、僕の……

社会人一年目から、職員室の空間に僕の机が置かれるなんて思いもしなかった

一年目は非常勤扱いで、一クラスか二クラスの数学の授業を受け持ち、来年あたりに副担任になって……教師4、5年目でどっかのクラス担任になると思ってた

教師になるために、大学で4年間の勉強をしてきたわけだけど…どこか夢現って感じで、現実感なんてなかった

教師はこうあるべきだっていう理想があるわけじゃないし

目標とする教師がいるわけでもない

じゃあ、なんで大学で教職課程をとって、教師の免許を取って…教師になったのだろうって考えると、自分でもよくわからない

ホント、なんでだろう

夢や希望のない若者が増えているなんてよく耳にするけど、僕はその一人なのかもしれない

いざ目の前に僕の机があって、椅子に座って仕事をしてみて、やっと僕は教師になったのだと、実感してきた

だからって、夢や希望が急に生まれるわけじゃないけど

「松浦って教師はどこだ? いつもいつも学校にいないで…今日くらいはいるんだろっ!」

職員室の扉ががらっと開くなり、男の低い声が響いた

僕はペットボトルのレモンティーを口につけたまま、振り返ると職員室のドアの前に立っている40代後半の男に目をやった

誰?

「お前かっ」

僕と目があった男がずかずかと職員室に入ってくる

僕はペットボトルを机の上に置くと、ゆっくりと席を立った

「何度も学校に電話をしてるんだぞ」

電話? 知らないけど…

僕が担任になったから、文句の電話でもいれていたのかな?

だいたいの予想はつくけどね

僕は着慣れないスーツの襟を正すと、ぺこりと頭を下げた
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