わたしの、センセ
わたしはそっと枕を持ち上げると、携帯を見つめる

まだ振るえている

道隆さんが、コールし続けている

もしかして出るまで、鳴らし続けるつもり?

やめてよ…怖いっ

どうして、わたしに電話なんかしてくるの?

道隆さんと一緒になる気なんて、わたしにはないって、知ってるんじゃないの?

ホテルから逃げた女に、まだ何か言いたいことがあるの?

わたしは枕をもとの位置に置くと、携帯の振動が伝わらない場所へと逃げた

センセからのメールを読みたいのに…

もしかしたら、もうセンセから返事がきてるかもしれないのに

早く、電話を切って

話したくないのよ

バイブの振動すら、わたしに良い影響を与えてくれない

恐怖と不安がわたしの胸に襲ってくる

ベッドから離れると、部屋のドアがノックされた

執事が電話の子機を持って立っている

「お嬢様、道隆様からお電話が……」

え?

携帯と家と…同時に二つにかけていたの?

信じられない

そこまでしてわたしと話したいって…何なの?

わたしは話したいことなんて、無いっ!

わたしは執事に首を左右に振った

「今、手が離せないの。後にしてもらって」

わたしは執事に部屋から出るように、手で合図をした

執事がお辞儀をすると、静かに部屋のドアを閉めた

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