孤島の結束
「タイ米頭悪〜い! ハハハハ! 教えてあげるよぉ〜。これ特殊メイクの血のりだよぉ。私ねぇ、結婚する前は特殊メイクの仕事してたんだも〜ん。知らなかった〜?」


 可奈子が笑いながら俺を見下し、そう言った。

 何だと? 血のり? じゃあこいつらは、死んだ振りをしてたっていうのか? だから可奈子のカバンは特大サイズだったのか……。それに俺は血が苦手で、血のついた死体は直視できなかった……。それをいい事にこいつらの芝居に騙されてたっていうのか?

 そして俺は疑問に思った。

 竹山彩と田中は俺が殺したから間違いなく死んでいる。でも何でだ? 何でこいつら揃いも揃って殺された振りなんかしたんだ?


「教えてやるよタイ米! 始めから俺達は、彩と田中を殺すつもりで、この別荘に集まったんだよ。あいつらは、俺達の弱みを握って脅してきたんだ。俺は医療ミス、可奈子は浮気、マジタニは違法な商売、ケンとマサもマジタニと似た様なもんが、とにかくどっから調べたのか、彩と田中は脅してきて、あいつらに金をいくら払ったか分からないくらいだ。そして彩が殺された時、始めは俺達の中の誰かが、計画とは違う事をしたと思った。だが、彩の死因を調べた時、明らかに自殺に見せかけて殺した事が分かり、カギのトリックもすぐに分かった。あのトリックが可能なのはタイ米! お前しかいないからな! 俺達は、お前を警戒しながら様子を見た。そして田中が殺される前、俺とマジタニは部屋へ戻り、ひとみと可奈子は大浴場に行き、ケンとマサはお前と一緒に居る状況を作った。酔って眠った田中をケンとマサがお前に、『田中を部屋に運べ』と言ったのも、お前と田中、二人きりのチャンスを作れば殺すだろうと思ったからだ。それに、ケンとマサは、お前が田中を運んでる間に、お前のコップに睡眠薬を入れたんだよ。次の日昼すぎまで寝てたのはその為さ! その間に可奈子の特殊メイクが出来るからな。アリバイの面では、俺とマジタニにもアリバイはないわけだから、お前は躊躇せず殺すと踏んだ。タイ米! 全てお前が殺しやすい様に舞台を作ってやったんだよ!」


 松島悟はここまで話し終え、ポケットからタバコを取り出し火をつけた。
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