Expansion-エクスパンション-
「本来、悪魔は魔法円の外に現れるんじゃ。正しい文字を描いている限り奴らはこの中に入る事は出来ん」

 魔法円とは召還者を守るものなのである。

 ナナンは応えたあと目の前の黒い渦を凝視した。

「とうとう……ルシファーが」

 杖を持つナナンの手が震える。

「ぐ……っ」

 リャムカでさえも迫り来る強大な気配に顔をゆがめた。

「……」

 白銀の鼓動が大きく脈打つ。だめだ……奴をこの世界に呼んでは。

 刹那──

「!」

 何かが頬をかすめた。白銀はその感覚に微笑む。

「そうか……解った。ありがとう」

「シルヴィ?」

 その表情にナナンは眉をひそめた。
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