Expansion-エクスパンション-
「あなたは優しすぎるのよ」

 その言葉に白銀は口の端をつりあげる。

「なるほど。俺の甘さを狙ったか」

 だが女はそれでも男には勝てなかった。

 この先戦ったとしても結果は負けだ。傷を負ってまで負ける勝負はしない。

 ライナは諦めて自分の船に歩みを進めた。船に入る直前ライナは白銀に目を向けてつぶやく。

「出来ればこんな再会の仕方、したくなかったわ」

 でも……女は次の言葉を飲み込んだ。彼なら解ってくれるだろう。

「……ライナ」

 もちろん白銀は彼女の行動を理解した。自分は狙われているのだと気付かせるための攻撃だと。

 飛び立つ宇宙船を見送って白銀は自分の船に戻る。

「誰だ?」

 コクピットに入ると知らない老人がそこにいた。

 見た処、地球人ではなさそうだが。
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