Expansion-エクスパンション-
「悪い気は発してないぜ。それでも放り込むのか」

 優しく包み込むマナが体に流れ込んでくる。これを放り込む……?

「それは持つ者の善し悪しで決まる。お前さん、それを永遠に持つつもりか?」

 色んなモノを引き寄せる球体、そんなものを持っていればどうなるか解らない訳じゃない。

 だが、こんな球と引き替えに星が1つ消えるかもしれないと思うと躊躇して当たり前だ。

 そんな白銀の頭の中に静かな声が響き渡る。

『早く投げなさい、あなたが気にする事ではない。これは私の責任でもあるのだから』

「えっ!?」

 振り返る、誰もいるはずなどないのに今のは……?

「どうした。星の声でも聞いたかの?」

「ジイさん……」

 老人の顔を見て、おもむろにマナ・グロウブを火口に投げ入れた。

 溶岩の中に消えていく球を見つめたあと白銀は老人を連れて急いで降りる。

 こんな処でのほほんとしている場合じゃない。

 早く逃げないと星が! その途端、地面が小刻みに震えだした。
< 29 / 112 >

この作品をシェア

pagetop