Expansion-エクスパンション-
 ディランは唖然と白銀を見つめた。

「いや……えと。それって凄いな。何が凄いのかいまいちわかんないけど。とにかく凄い」

 変な感心の仕方をしたディランに白銀は苦笑いを浮かべた。

 まだ混乱しているのだろうか、それとも完璧には理解し難いのか目がうつろだ。

「同じ位階である親父の血。その子供の俺を生け贄にする事で奴の封印は解かれる」

 もともと天使には実態は無いとされる。

 罪を犯す事により肉体が現れるのだと……人を愛した事もまた罪なのかもしれない。

「それって、シルヴィの親父さんが天国にいるから息子のお前で間に合わせる……ってやつ?」

「……まあそんなとこ」

 ディランの理解に多少悩むが白銀は答えた。

「俺は天界にとっては『罪の証し』だ。その張本人は何をしているやら」

 白銀は薄い笑みを浮かべて皮肉混じりにつぶやいた。

「天界にはいばらの牢獄があるという……罪を負った天使が未来永劫、そこでいばらのトゲに血を流しながら罰を受ける」

 さぞ美しく、悲しい光景だろう。

 ナナンはそう言って目を伏せた。
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