Expansion-エクスパンション-
「どうした。もういいんじゃぞ」
「いやだ」

 エイルクの声に白銀は眉をぴくりと動かした。

「あんなトコに戻るくらいならあんたたちについていく」

「おいおい……」

白銀は呆れて少年を見やる。

「ガキを連れ歩くほど俺たちは暇じゃない」

 立て。と白銀はエイルクの腕を掴もうとした。

 しかし彼はそれを激しく拒否すると声を張り上げてまくしたてる。

「おいらが見つけた球であんたたちが困ってるんだろっ? だったらおいらにもその責任を取らせてくれよ!」

 おいらだって役に立てるよ! 言った少年に白銀は目を据わらせる。

「ここから出たいから言ってるんだろう?」

「うっ……」

 ディランは声を詰まらせたエイルクに小さく笑いかけしゃがみ込む。

「君の気持ちは解るけどね。危険なんだよ。命が無いかもしれない」

「どうせここにいたって同じだよ。死んでないだけで何も出来ない」

 少年は肩を落とした。

 生まれる前から決まっている地位に彼らに為す術はない。

 それから逃れるためには故郷を捨てる他は無いのだ。

「どうせ……おいらがいなくなっても誰も泣いちゃくれない」
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