Expansion-エクスパンション-
 まだ見ぬ父親──一体どんな人物なのだろう?

 人間を愛したというだけで罰を受けイバラの牢獄に永久に閉じこめられた父。

 自分が天界に行くだけでそこから解放されるなら……

「それこそ馬鹿者じゃ。そんな事をして彼が喜ぶとでも思っているのか。そんな事をすればまたお前のために罪を重ねるだけじゃ」

「! 罪を重ねる?」

「今度は本当に神に叛(そむ)くかもしれん」

 その言葉に白銀は眉をひそめた。

「なんのために私に『後を頼む』と彼が言ったと思うのだ。全てはお前のためだ」

 ナナンは白銀の両手を握りしめ必死に言い聞かせた。

 昔の言葉遣いに戻っている事にも気付かずに……

「お前はお前の道を進むこと。それが彼のもっとも望む事だ」

「……」

 白銀はナナンの深い瞳を見つめる。
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