約束
忘れるはずない。


その日は私の誕生日だったんだ。



どうしてあのときもういっかい名前をきかなかったんだろう。


そう悔やまれることもあった。


でも10年後会えたら。


名前を聞くことができたら。


そう思いながら時はすぎていった・・・・




そうこう思い出しているうちに家に着いた。


「ただいまー」


「おかえりー。おやつあるわよ。」


「わーい♪やったー」


私はクッキーをひとつ口にいれた。


「そうだ、香もうすぐ誕生日ね。」


「うん。ってああーーーーーー!」


叫んだとたんむせてしまった。


すぐさま紅茶を一口飲んで落ち着く。


そして今頃私は重大なことに気がついてしまった。


「あの公園の場所・・・!」


あのころまだ私は小さかったし、迷ったあげくついたあの公園。


場所を覚えているはずがなかった。


「もう・・・大丈夫なの?」


心配してくれるのもかまわず私はお母さんにいった。


「お母さん!前、私が迷子になった公園の場所、どこ!?」


「え?あの公園?ああ、あれは・・・あれ?どこだっけ?」


あれこれ記憶をめぐらしているようだが思い出しそうにもない。


まったく・・・自分の娘が迷子になった場所も覚えていないとは困った母親だ。

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