【一話完結×短編集】ビター&スィート
ひとしきり泣いた後

ふらふらと部屋に入る




「あっ…ビール忘れちゃった」




思わず微笑む




こんな状況なのに

ビールだなんて…




微笑んだまま


視界はまたぼやけ始める




“ボスッ”





音を立ててベッドに倒れこむと


身体を丸くして膝を抱え


コートを着たまま


そのまま、ひたすら泣いた





泣いても


泣いても


涙は枯れない





恥ずかしがりやな祥ちゃんは

手を繋ぐだけでも

はにかんで私に微笑むような人だった




なのに…



キス…出来ちゃうんだ…




それだけ…



あの人は特別なの?






ねぇ…いつから?



いつから…



――気づかなかったよ…
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