【一話完結×短編集】ビター&スィート
涙を拭い
全ての思考を手放し
クッションを抱え
うずくまってると
インターフォンが鳴った
……祥ちゃんだ
わかってるのに動けない
ガチャッ
合鍵で入ってくる音が聞こえる
「おーい、真優莉?
寝てるのか??」
その声を聞いて
クッションを持ったまま
寝たふりをした
「やっぱり…」
そんな祥ちゃんの優しい声が聞こえる
せっかく冷やして
腫れが引いたのに
また涙が出てきそう…
「真優莉…
こんな所で寝てると風邪引くぞ?」
優しく揺さぶられ
今、起きましたって振りをする
「あっ…祥ちゃん…おかえりなさい」
「んっ…ただいま
久々に会うな」
そう微笑んで
そのまま近づいてくる祥ちゃんの顔
咄嗟に立ち上がった
「ごめん…寝ちゃってた
今すぐビーフシチュー温めるね」
そう言ってキッチンに向かおうとした手を
強く握り締められた
途端に、身体がビクッと反応する