花葬の時間


「イ、イチ君…?」



ハサミなんて、そんなもの人にむけちゃ危ないよ?


イチ君はジャキジャキと空を切り裂き、鋭い切れ味を見せ付ける。


待って、わたしは人形じゃないからそんなもの突き立てられたら間違いなく、死ぬ。


そしたら、ほら。人形のニナじゃなくてわたしのお葬式になっちゃうよ?



「ね、ねえ、イチ君てば…」



確認のためにもう一度イチ君の名前を呼ぶ。


わたしの事、その人形みたいにグチャグチャにしようだなんて思ってないよね?


「大丈夫、こわくないよ」


イチ君は洞窟の中から笑顔で首を傾げた。いや、怖い。怖いぃぃ。



「大丈夫だから、早くおいでよ」



だから、ハサミをこっちへ向けているヤツに、おいでと言われて誰が行くか。



「僕がこわくないようにしてあげる」



語尾に音符でもつくかのような弾んだ声。


お前が一番怖いわっ!



「だ、だから!わたし行かないから!もう今日はここでバイバイ!」



イチ君の行動を見ながら、少しずつ後ずさる。


だってイチ君は、まだハサミをおさめてはくれないから。
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