花葬の時間


「イチ君、なにしてるの…?」


「んー?この子のこと、可愛すぎて壊したいの」


イチ君は無駄にいい笑顔で答えてくれた。


たまらず聞いてしまったけど。…だめだ。これ以上は突っ込めない。というか笑えない。


先生に言った方がいいのかな。イチ君が自由創作時間に作ったクマの人形をズタズタのグチャグチャに切り裂いてるって。


う、うわ…ちゃんとリアルに腹の中身まで…。き、気持ち悪っ。おえっ。


なんでこんなやつが隣の席なのよ!二人で一つの席だから離せないし。


「これ、ニナちゃんをイメージして作ったんだよね」


「…はあっ?」


イチ君は笑いながらクマの人形の顔面にハサミを突き立てた。


ブチンと目玉のボタンが弾け飛んでコロコロとわたしの目の前に転がってきた。


「あは、ニナちゃんの眼球飛んじゃったね?」


…もう、無理。我慢の限界を超えました。


「イチ君!そんな薄気味悪い人形にわたしと同じ名前つけないでよっ。気持ち悪い!」


「ニナちゃん…」


「えっ、ちょ!イチ君なんで泣いてるの…?」


イチ君の黒い長めの前髪に半分隠れた紫の瞳からハラハラと頬っぺたを伝う雫は、なに。
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