花葬の時間


いやまて、落ち着けわたし。あれは人形。わたしじゃない。


いくら同じ名前つけられたからって……。チラリと横目でイチ君を盗み見る。



「大丈夫だよ、ニナ。ひとりじゃないからね?」



人形の頭を撫でながら愛おしそうに、もう一度キス。


せ、生理的にもう無理ぃぃぃ。


「あ、ニナちゃんも一緒に来ない?その方がニナも喜ぶだろうし」


「い、いい。いいよ。わたしは…!」


無理!絶っ対、無理!


「遠慮しなくていいんだよ…?ニナちゃんだったら許してあげる」


何を基準に許してもらえるんだろう、という疑問は置いといて。


別に遠慮なんかしてない。全身全霊で拒否したい。


「来てくれるよね?じゃないと僕…」


え、ちょっと。あんたの『ニナ』がミチミチいってるよ…!?


「ニナちゃんのこと考えて気が狂いそう」


「行かせていただきます」


ニコッと爽やかな笑顔の下で、引きちぎれそうなソレを見て背中に悪寒が走る。
< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop