ゲイな彼と札束

何日もしのげるような金はない。

売りをしようにもアザだらけ。

こんなんじゃ気味悪がって誰も食いつきやしない。

参ったな。

アザが治るまでホームレスかよ。

ため息をつくと、殴られた顔や蹴られた腕と脚がズキズキ痛みだした。

あの男のところに帰る気は毛頭ない。

どうしてあたしは男に殴られるんだ。

やっぱり過去の悪行の報いなのだろうか。

しばらくボーッとした後、あたしはまた新宿駅へと向かった。

人はやっぱりあたしを可哀想な目で見るけど、開き直って堂々とアザ顔を晒してやった。

JRの改札を抜け、中央線に乗った。

乗ったはいいが、近くなった人々の視線に耐えられず、数駅で下車。

中野だった。

改札を出てあてもなく歩き出す。

横断歩道で信号待ち。

あたしは左に再び違和感を覚えた。

その正体を突き止めようと、目を向ける。

するとそこには、さっきの捨て犬男がいた。

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