ゲイな彼と札束
夜。
ディナーは都心のコジャレたイタリアンレストランにて。
マモルがわざわざネットで予約をしてくれていた。
ナイフとフォークがたくさん出てくる店は初めてだったから、あたしは緊張しながら食事をした。
ただでさえ育ちが悪いから、マナーも知らないしナイフとフォークの握り方にも自信がなく、マモルや他の客をコッソリ観察して真似をした。
あたしの背筋はピンと伸びていたに違いない。
料理はすごく美味しかった。
その後手を繋いで街をブラブラして、何となく目についた大人っぽいバーへ。
名前だけ知っているカクテルを頼み、乾杯した。
「こういうデートもいいね。俺、すっげー楽しかった」
マモルが酒を飲む姿を見たのは今日が初めてだ。
可愛い顔をして、結構飲む。
意外と酒には強いらしい。
「あっそ。よかったな」
「サエは? 楽しかった?」
マモルはほろ酔いで上機嫌だ。
聞くなよ。
あたしがツンとして黙ると、マモルはしゅんと眉を下げた。
「楽しくなかった?」
そんな顔をされると、こう答えるしかなくなる。
「楽しかったよ」
恥ずかしいけど、本心だ。
ほんのり顔を赤らめ、にっこり笑うマモル。
可愛い。
ジョージもこいつのこういうところが好きだったのだろうか。
マモルはグラスを空けて言った。
「俺、サエのこと結構好きだからね」