ゲイな彼と札束
酔っているのか、マモルはさっきからやたらとあたしを可愛がる。
「結構って何だよ」
「結構は結構だよ。かなりってこと」
それは、友達として?
妹のような同居人として?
それとも、女として?
「あっそ。はいはいありがとね」
聞き流しながらあたしもグラスを空ける。
といっても、これが1杯目だ。
マモルはすでに3杯飲んでいる。
「あ、どうでもいいっていう反応だね」
「どうでもいいんだよ。ゲイの無意味な告白なんて」
あたしはマモルが好きだから、同じ重みがない「好き」は切ないだけだ。
「無意味なんかじゃないよ。あれ、おかわりは?」
それを聞いた髭面のマスターが寄ってきたが、あたしはカクテルの名前ではなく「チェックお願いします」と言った。
マモルは不満そうな顔だ。
「えっ? もう出るの?」
文句を言いつつ、マスターの持ってきた伝票を見てしっかりお金を払っていた。
「さて、帰るぞ。もうすぐ終電だ」
「あれ? ホテルは?」
「行かないよ」
「泊まるんじゃなかったの?」
「泊まらない」
泊まったって何も満たされないのだから意味がない。
これ以上マモルの言葉に振り回されたくない。