ゲイな彼と札束

「えー。俺、楽しみにしてたのに」

またしゅんとしたマモルを見ると、少しだけ罪悪感を覚える。

「そんなに行きたいなら行ってもいいけど、襲っていいの? お前のこと」

「うーん、それは困るなぁ」

……困るのかよ。

普通、男だったら喜ぶところなんだけど。

ていうか、なんか胸が痛い。

不覚にも軽く傷ついている。

襲っていいの?なんて聞くんじゃなかった。

「ほら、電車もうすぐ来るから」

手を繋ぎ、駅へ。

中野へ戻る電車に乗った。

マモルは不服そうな顔をしているが、あたしの方がよっぽど不服なんだってわからせてやりたい。

電車は夜中なのに人が多く、あたしはドアに寄りかかった。

マモルは人からあたしをかばうように立ってくれている。

ヒールを履くと、あたしとマモルはほぼ同じ身長だ。

向かい合った顔が、近い。

酒のせいで少し眠いのか、マモルの目がトロンとしている。

カタンカタン……

定期的なリズムに揺られ、マモルは立ったままウトウトし始めた。

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