ゲイな彼と札束

クタッと頭だけあたしの肩にもたれる。

熱くて酒臭い寝息がくすぐったい。

だけど、ちょっと心地良い。

「ったく、立ったまま寝るなよ」

という声も、こいつにはもう聞こえていないようだ。

だったら今のうちに言っておこう。

あたしはマモルを支えるように、右腕だけを彼の背中に回した。

そして、周りには聞こえない小さな声で、

「好きだよバーカ」

と呟いた。

マモルはぴくりとも反応せず、ひたすら寝息を立てていた。

電車を降り、ゆっくり歩いてマンションに戻った。

エントランスを抜け、寝ぼけ眼のマモルが郵便受けを覗く。

「サエ宛に何か来てる」

通販で買った小物だ。

住所の登録はうまくできたらしい。

「あ、やっと来たんだ」

「通販? 何買ったの?」

「ピアスとか」

「ふーん。早く帰って開封しよう」

「うん」



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