ゲイな彼と札束
昨日、珍しく来客だと思ったら警察だった。
「こんにちは。中野警察署の者ですが、瀬戸冴さんでいらっしゃいますね?」
頭の中が真っ白になった。
優しそうな男性の声。
だけどわざわざあたしを訪ねてくるなんて。
このまま親父の元にに連れ戻されるんじゃないだろうか。
違います、と言った方がいいかもしれない。
答えあぐねていると、返答を待ちかねた相手は落ち着いた声で付け加えた。
「安心してください。少しだけお話をさせて頂きたいだけです」
「……どんな話だよ」
この返答が自分が瀬戸冴であることを認めたことになるとはわかっていた。
話が親父のことであるとは限らない。
前の男たちのことかもしれないし、マモルのことかもしれない。
そう思うと、話くらい聞かないといけない気になった。
「瀬戸義則(よしのり)さんについてです」
親父の名前が聞こえた瞬間、あたしはインターホンをガチャリと切った。