ゲイな彼と札束
親父だ。
親父がとうとうあたしの居場所を嗅ぎつけやがった。
どうしよう。
どうすればいい?
マモルはいない。
すかさずすぐにチャイムが鳴る。
心臓がバクバク鳴っている。
頭がキーンと冷えていく。
手足は震え、口が渇く。
ソファーに移動しても、落ち着いて座ることができない。
喉を潤したいけれど、カップにコーヒーは一口分しか残っていなかったし、苦かった。
とりあえず落ち着こうと思い、タバコに火を着ける。
乾燥した口で吸っても、不味いだけだった。
それでもゆっくり吸う、吐く。
灰皿の横の諭吉は不気味な表情であたしを見つめている。
そうしていると、今度はドアベルが鳴った。
コンコンコン、と扉を叩く音も聞こえた。
「瀬戸さーん。お願いします。話だけ聞いてください」
管理人に警察であることをアピールして、オートロックを突破したに違いない。
これだから警察は嫌いだ。
怖さですっかり冷静さを失っていたあたしは、リビングを出て玄関からドア越しに怒鳴りつけた。
「親父のとこなんかに戻りたくねーんだよ! 帰れ!」