ゲイな彼と札束
カチャ……
扉を開くと、二人はまず、
「ご理解頂いてありがとうございます」
とあたしに頭を下げてきた。
警察に頭を下げることはあっても、下げられたのは初めてだった。
なんだかすごく気持ち悪い。
「台風なのに、ご苦労さまです……」
思わずこんな大人びたことを口にしてしまった。
リビングに招こうとしたが、そこであたしはあることを思い出し、
「ちょっとここで待っててください」
と言って二人を玄関に待たせた。
テーブルにはカップや灰皿だけでなく、札束や契約書が放置されている。
喫煙はにおいでもうバレているけれど、せめて片付けはしておかねば。
札束を見られると、怪しい商売でもしていると思われかねない。
手早くテーブルを片付け、改めて警官二人を中へ入れた。
「失礼します」
「あ、座布団とかないんで、そこのソファーに座ってください」
「ああ、いえ。お構いなく」
結局オッサンの方がソファーに座り、若い方は90度隣に正座した。
あたしは若い方に足を崩すよう告げ、オッサンの向かい側にラフに座る。
「それで、親父のことというのは?」
オッサンは眉間にしわを寄せて、静かに告げた。
「あなたのお父さんは、実はもう亡くなっています」