ゲイな彼と札束

カチャ……

扉を開くと、二人はまず、

「ご理解頂いてありがとうございます」

とあたしに頭を下げてきた。

警察に頭を下げることはあっても、下げられたのは初めてだった。

なんだかすごく気持ち悪い。

「台風なのに、ご苦労さまです……」

思わずこんな大人びたことを口にしてしまった。

リビングに招こうとしたが、そこであたしはあることを思い出し、

「ちょっとここで待っててください」

と言って二人を玄関に待たせた。

テーブルにはカップや灰皿だけでなく、札束や契約書が放置されている。

喫煙はにおいでもうバレているけれど、せめて片付けはしておかねば。

札束を見られると、怪しい商売でもしていると思われかねない。

手早くテーブルを片付け、改めて警官二人を中へ入れた。

「失礼します」

「あ、座布団とかないんで、そこのソファーに座ってください」

「ああ、いえ。お構いなく」

結局オッサンの方がソファーに座り、若い方は90度隣に正座した。

あたしは若い方に足を崩すよう告げ、オッサンの向かい側にラフに座る。

「それで、親父のことというのは?」

オッサンは眉間にしわを寄せて、静かに告げた。

「あなたのお父さんは、実はもう亡くなっています」

< 115 / 233 >

この作品をシェア

pagetop