ゲイな彼と札束

同情でいい。

体目当てでもいい。

宿も金もない。

背に腹は代えられない。

これも何かの縁だ。

どう切り出そうか考えていると、

「じゃあ、うちに来ませんか?」

と捨て犬男の方から誘ってきた。

え? ほんとに? いいの?

ラッキー。

ていうか、こいつ、大人しそうな顔して結構やるじゃんか。

「いや、あの、ナンパとかじゃなくて。俺、手とか出さないんで安心してください」

潔いなと感心した直後、急にクリーンぶる捨て犬野郎。

感心して損した。

どう見てもナンパだろ。

後になって色々言い訳するくらいなら、はじめから目的をはっきりさせてくれた方が楽なのに。

わかってないな。

でもまあ、宿なしのあたしには、どんな形であれありがたい。

「助かるよ。金もなくて困ってたんだ」

あたしがそう答えると、こいつは不幸なオーラを醸し出したまま、ほっとした表情を見せた。

「俺こそ、話し相手が欲しかったんです」

「話し相手?」

「はい。実は俺、恋人に振られたばかりで」

なるほど。

捨て犬顔になったのはそのせいか。

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