ゲイな彼と札束

「ただいまー。外すっごいよ。風で電柱が折れそう」

マモルは夕方、雨でびしょびしょになって帰ってきた。

Ｔシャツが素肌に貼り付いて、妙に色っぽい。

「うわ、すげー濡れてんじゃん。ちょっと待て。まだ入んな家が濡れる。タオル取ってくる」

あたしは風呂の湯を溜めるスイッチを入れ、タオルを持って玄関に戻る。

「ありがと。風で傘もやられちゃったよ」

「バカ野郎。台風の日に傘なんて差すなよ危ないな」

「差さないと濡れちゃうじゃん」

「差しても濡れんだよ。今風呂溜めてるから、先に濡れてる服を脱げ。風邪ひくぞ」

脱衣所で着ていたＴシャツとハーフパンツを脱がし、そのまま洗濯機に突っ込む。

パンツ一丁のマモルに、ドキッとした。

マモルは風呂の後も、きちんと服を着て出てくるから、彼の素肌を見たことはほとんどない。

白いし細いしひょろひょろだと思っていたが、こう見るとしっかり男の体をしている。

「お湯、まだ溜まってないけど、このままお風呂入っちゃうね」

「わかった」

あたしはいったん脱衣所を出てリビングに戻った。

テーブルが片付きすぎていることに気づき、片付けていた札束などを元の場所へ置く。

予期せぬ来客があったことは、知られたくない。