ゲイな彼と札束
内心ガッカリしながら背中を触れやすい角度に向けてやると、マモルの指が鳳凰を優しく撫でた。
「へぇ、全然凹凸がないんだね」
あ、ヤバい。
そんなにじっくり背中を撫でられたことなんてなかったけど、思ったより神経が発達している。
「彫った直後はミミズ腫れしてたけどな」
わざとその時の痛みを思い出し、胸の奥から湧き出る甘い感情と相殺させてゆく。
そうしないと、うっかり喘いでしまいそうだった。
「感覚、あるの?」
「……あるよ」
マモルはわかってない。
スルスルと滑るしなやかな指が、あたしにどんな感覚を与えているか。
温かい湯に浸かっているのにゾクゾクする。
マモルが突然、カリッと背中を引っ掻いた。
さっきまでとは異なる刺激に、ドキッと胸が反応する。
「掻いても取れないね」
こいつもしかして、こう見えてものすごく“上手”なのではないだろうか。
「出来損ないの刺青にしか興味がないのかよ」
それでも男か。
目の前に裸の女がいるんだぞ。
「サエの背中、キレイだね」
「は?」
「俺、ゲイだけどさ。女の体ってキレイだなって思うよ」
余計に顔が熱くなった。
あたしは湯の中で、自分の膝を抱く力を強める。
「それでもマモルは、女より男が好きなんだろ?」
あたしより、ジョージの方が。