ゲイな彼と札束

マモルはピタリと触れるのをやめ、手が湯音を立てて元の位置に戻ってきた。

「まあね。ゲイだから」

だったらあんな触り方して期待させんじゃねーよ。

そんな短い言葉で、バッサリあたしの気持ちを潰すんじゃねーよ。

裸で密着していても、マモルの体が反応していないってだけで、十分傷ついてるっていうのに。

「彼女、いたことないの?」

「それがさ、あるんだよね」

……あるのかよ。

女にはモテるって言っていたし、わかる気はする。

「いつ?」

「高校の時。まだ自分がゲイだって気付く前」

へぇ、思ったより最近だ。

その頃はまだ自分をノーマルだって思ってたんだ。

「どうだった?」

「可愛かったし好きだったけど、思ってたのとは違った」

「どうして?」

「すべてが何かの真似事で、恋人ごっこのような気がしてた。その子を大切には思ってたけど、年頃の男なのに全然ムラムラしたりはしなくて。自分からはエッチできなかったんだよね」

「自分からは?」

じゃあ、女としたことがないわけじゃないのか。

「相手の子が頑張ってくれて、なんとかって感じ?」

「あー……」

あたしにはその女の気持ちがわかる。

好きな男と一緒にいるのに、求められない虚しさ。

マモルは罪深い男だ。

ゲイのくせに、こうして女を囲ったりして。

ジョージのために、あたしが惚れていることにさえ気づかずに。

< 127 / 233 >

この作品をシェア

pagetop