ゲイな彼と札束
マモルはピタリと触れるのをやめ、手が湯音を立てて元の位置に戻ってきた。
「まあね。ゲイだから」
だったらあんな触り方して期待させんじゃねーよ。
そんな短い言葉で、バッサリあたしの気持ちを潰すんじゃねーよ。
裸で密着していても、マモルの体が反応していないってだけで、十分傷ついてるっていうのに。
「彼女、いたことないの?」
「それがさ、あるんだよね」
……あるのかよ。
女にはモテるって言っていたし、わかる気はする。
「いつ?」
「高校の時。まだ自分がゲイだって気付く前」
へぇ、思ったより最近だ。
その頃はまだ自分をノーマルだって思ってたんだ。
「どうだった?」
「可愛かったし好きだったけど、思ってたのとは違った」
「どうして?」
「すべてが何かの真似事で、恋人ごっこのような気がしてた。その子を大切には思ってたけど、年頃の男なのに全然ムラムラしたりはしなくて。自分からはエッチできなかったんだよね」
「自分からは?」
じゃあ、女としたことがないわけじゃないのか。
「相手の子が頑張ってくれて、なんとかって感じ?」
「あー……」
あたしにはその女の気持ちがわかる。
好きな男と一緒にいるのに、求められない虚しさ。
マモルは罪深い男だ。
ゲイのくせに、こうして女を囲ったりして。
ジョージのために、あたしが惚れていることにさえ気づかずに。