ゲイな彼と札束
マモルは決して抵抗しなかった。
腕もしっかり締めたまま、素直にあたしのキスを受け入れていた。
ほんの数秒だったけど、あたしは甘い夢に溺れることができた。
「サエ、どうしたの?」
恥じらうような表情。
そんな顔をしているのに、本当にこの男はゲイなのだろうか。
「何ともない?」
「え?」
「あたしにこうされて、どうにかしようって気分にはならない?」
あたしは、自分を賭けることにした。
マモルがあたしに靡けば残留。
靡かなければ、帰郷。
答えを急かしたいが、マモルは黙ったまま固まっている。
「それとも、気持ち悪い?」
「気持ち悪くなんてないよ。でも……」
でも、何だよ。
ムカついたからもう一回奪う。
深く、深く、激しく。
これまでの人生で培った、持てる限りの技術を込めて。
それ以上あたしが傷つく言葉を発することができないように。
これは、仕返しだ。
報われない恋心の暴走だ。
「サエ、もうやめっ……ふっ……」
マモルが抵抗していようが、もう関係ない。
賭けはあたしの大負けだ。
マモルはここまでしても、あたしをどうにかしようという意思を微塵も見せなかった。
解放してやると、マモルは困った顔をしていた。
「サエ……?」