ゲイな彼と札束



眠れないまま迎えた明け方。

マモルは思い出のベッドでスヤスヤと眠っている。

あたしは荷造りや着替え、メイクを終えて、自分で淹れた微妙な味のコーヒーを飲みながらラッキーストライクを吸った。

灰皿にポンと灰を落とすと、ひらひら舞った小さな灰が札束に乗る。

諭吉の顔を汚してしまった。

少し申し訳ない気持ちになる。

「これ、全部あげるよ」

まるでタバコをくれるように、簡単に差し出された300万円。

結局1ヶ月で3万円ほどしか使っていない。

財布には2万円入れてある。

あたしは数秒考えて、半端な95万円の束だけを持っていくことにした。

あっちに帰ったら何かと金がかかるだろう。

住むところとか、家電とか。

あたしにはもう実家がないのだから、全て一から揃えなければならない。

その費用をここから出そう。

残りの200万は、あたしには必要ない。

使うようなこともないし、持っているだけで金銭感覚が狂いそうだし、置いていこう。

元々マモルのものなのだから、マモルの好きに使えばいい。

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