ゲイな彼と札束

そして、最後の一仕事。

自分の意思で出ていくことを、きちんとアピールしておかなければならない。

捜索願いなんて出されても困る。

親父みたいに死なれたりしたらたまったもんじゃない。

マモルには幸せに生きてほしい。

自らの意思で家を出るなら警察は介入できないと、警察自身が言っていた。

あたしはメモ紙に短く手紙を書いた。

『今までありがとう。大好きでした』

短い間だったけど、あたしは今までで一番穏やかに生きられた。

でも、気持ちが報われないのは辛い。

だから、最後に押しつけていくんだ。

思い知れよ、ホモ野郎。

あたしがお前に、どんな気持ちでキスしたか。

マモルの番号とアドレスしか入っていない赤い携帯も、置いていくことに決めた。

電源を切ってメモを挟み、200万円の上に乗せる。

そして服と下着を詰めた服屋の紙袋と小さなCOACHのバッグを持ち、立ち上がった。



台風も去り、天気は良好。

旅立ちの時が来た。



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