ゲイな彼と札束
風が湿っぽく、昨日の台風のせいで道はゴミが散らかっている。
コンビニで飯と飲み物とタバコを買い、駅へ。
改札を入る前に、タケシに殴られた喫煙所でタバコを吸った。
電車には、こんな時間なのにそこそこ乗客がいた。
空いている座席に座ると、下世話な週刊誌のポスターが目に入った。
『松島ジョージ結婚の真相・デキちゃった結婚も映画の宣伝!?』
という記事があるらしい。
この手の週刊誌は嘘ばかり並べていると思っていたが、あながち間違いではないのかもしれない。
もしジョージが結婚しなかったら、あたしはマモルと出会うことすらなかった。
ゲイに恋をすることもなかったし、親父が死んだのを知るのも、もっとずっと後だった。
ジョージに直接会ったことはない。
けれど、ジョージはあたしの人生を動かした男だといえる。
だけどあたしには、彼の人生を動かすことなど到底できない。
できることなら自分の都合でマモルの夢を奪ったクソ俳優を破滅させてやりたいが、あたし一人が喚いたところで効果はないだろうし、渋々金で納得したマモルを困らせるだけなのだ。