ゲイな彼と札束
河川敷
秋は深まり、晩秋を迎える今日この頃。
地元での一人暮らしにも慣れてきた。
役所関係の面倒な手続きも済ませて身分を証明できるようになったから、部屋だって借りられたし携帯だって自分で買えた。
アーケード街近くのスナックでホステスのバイトを始めた。
東京ではできなかった、自分の家がある当たり前の生活を送っている。
男に頼ることなく、殴られることも優しくされることもなく。
ひっそり気ままに一人で生きている間に、あたしは19になった。
寂しい誕生日を迎えたわけではない。
バイト先のママがケーキを買ってくれたし、常連の客にプレゼントももらった。
それなりに充実したシングルライフ。
だけど未練がましいあたしは、マモルが買ってくれたのと同じ赤い携帯を使っている。