ゲイな彼と札束
「いらっしゃいませぇ。あ、高木(たかぎ)さん」
スナックでは33歳のママと24歳の先輩と、3人でまったり働いている。
まだ未成年だから酒は飲ませてもらえないが、常連の客は友達のようで楽しい。
言葉もすっかり方言に戻った。
「お、サエちゃん。今日もステキなお召し物やねぇ」
「そうやろ? これは今日、昼間に買い物に行っちきたんよ」
贅沢はできないが、自分の稼ぎで自分の欲しいものを買えるというのは、なんとも清々しい。
マモルに買ってもらった服はちゃんと取ってあるが、夏物だから今は着られない。
「そうかい。買い物するっち言うてくれたら、少しくらい買うてやったとになぁ」
「これくらい自分で買えるもーん」
「ほいじゃ、あたしが買うてもらおうかねぇ」
「わわ、ママに聞かれてしもたー」
笑いが溢れ、マモルといた頃より穏やかな毎日。
報われない恋など、もう忘れてしまっている。
一夏の思い出、なんてそれっぽい名前を付けて心のアルバムに葬った。
「それにしてもサエちゃんは、若いのに哀愁漂わせちょるのぉ」
「え?」