ゲイな彼と札束
マモルの家は、外壁が薄茶色の小綺麗なマンションだった。
エレベーターで5階まで上り、奥の角部屋の扉が開く。
「どうぞ」
「どうも」
男の一人住まいにしては広い玄関に明かりが灯る。
まったく生活感がない。
新しい匂いがするし、そもそもほとんど物がない。
リビングダイニングに通された。
部屋には二人掛けのソファーと小さなテーブルのみ。
テレビもない。
テーブルは書類やら小物やらでごちゃっとしている。
こういうタイプの人間の部屋はみんなこうなのか?
いやいや、そんなまさか。
「最近越してきたばかりなんだ」
「ああ、どうりで」
そりゃそうだ。
テレビすらない住まいなんて、見たことがない。
「まだ家電も揃ってなくてさ、不便だよ」
「だから電機屋にいたのか」
「そういうこと」