ゲイな彼と札束

マモルの家は、外壁が薄茶色の小綺麗なマンションだった。

エレベーターで5階まで上り、奥の角部屋の扉が開く。

「どうぞ」

「どうも」

男の一人住まいにしては広い玄関に明かりが灯る。

まったく生活感がない。

新しい匂いがするし、そもそもほとんど物がない。

リビングダイニングに通された。

部屋には二人掛けのソファーと小さなテーブルのみ。

テレビもない。

テーブルは書類やら小物やらでごちゃっとしている。

こういうタイプの人間の部屋はみんなこうなのか?

いやいや、そんなまさか。

「最近越してきたばかりなんだ」

「ああ、どうりで」

そりゃそうだ。

テレビすらない住まいなんて、見たことがない。

「まだ家電も揃ってなくてさ、不便だよ」

「だから電機屋にいたのか」

「そういうこと」

< 14 / 233 >

この作品をシェア

pagetop