ゲイな彼と札束
「あれ、ヒロキやん」
暗い店内のカウンターにいるのは、同じ中学の不良仲間だったヒロキだ。
耳も顔もピアスだらけ、捲っている袖口から見える腕はスミだらけ。
すっかり変わってしまっているが、確かにヒロキだ。
ヒロキはものすごく驚いた顔をした。
「……サエか?」
「そうだよ、超久しぶりやん。元気にしちょった?」
懐かしい友との再会にテンションの上がったあたしは、狭い店なのに大きな声ではしゃぐ。
かたやヒロキは眉間にギュッとしわを寄せた。
眉や鼻、口のピアスのせいで厳つさが増し、怒っているようにも見える。
「どうしたん?」
あたしとの再会は、彼にとって喜ばしくなかったのか。
地元に戻ったところで誰にも歓迎されていないあたしの心がズキンと痛む。
「いや、な。生きちょったんやと思って」
「何なんそれ」
「お前、死んだっち言われちょんぞ」
は? 死んだ?
誰にも言わずに東京に逃げたから、そう思われても仕方がないのかもしれない。
仲間にくらい、伝えておけばよかったのだろうか。
「生きちょるわ、この通り」
せっかく再会できたからしんみりしたくなくて、わざとおどけて見せる。
だけどヒロキはますます怖い顔になって言った。
「サエ、お前気ぃ付けた方がいいぞ」