ゲイな彼と札束

本当にろくな中学生ではなかった。

自分で言うのもおかしいとは思うが、あたしは根っからの悪い奴というわけではない。

現に今は真面目に働いているし、人様に迷惑はかけずに生きたいと思っている。

不良とかヤンキーとか呼ばれているやつらだって、ほとんどは普通の大人になる。

当時は一時的に、何かしらやりきれない不満があって、反抗したいとか自分を強く見せたいとか、そういう思いを持て余した結果、非行に走ってしまう。

ただ、根っからの悪いやつってのもたまにいるし、その不満を大人になってもなかなか晴らせないやつらがいたりする。

そのタイプの人間は、厄介だ。

あたしは懐かしい河川敷に降りてみた。

かつて仲間と集った橋の下でタバコを吸い、あの頃と同じように地面に吸い殻を落として踏み潰す。

19になって良識が身に付いたあたしは、その吸い殻をつまみ、バッグに忍ばせていた携帯灰皿に詰めた。

まだ未成年であることに関して、少しの罪悪感を感じながら。

中学時代の自分に思いを馳せて、あたしはまた歩き出す。

次の行き先は、かつての我が家だ。

< 144 / 233 >

この作品をシェア

pagetop