ゲイな彼と札束
ーーバシャン
一通り痛め付けられたあたしは、最終的に冷たい川へ投げられた。
川の端は浅くて浮力も大してはたらかず、またしても体を強く打ってしまった。
川岸からは笑い声が聞こえる。
手を後ろに縛られたままで、コートの重みもあり、上手く立ち上がれない。
川の水は冷たくて、刺すように体を刺激してくるが、あたしはしばらく水に流されてやった。
「あれ、死んだ?」
「死んではないやろ」
「けどちょっとヤバくない?」
流されていたから聞こえたのはこの辺までだ。
水の冷たさで手足の感覚がない。
川幅の中央へ行くほど深くなって、いつの間にかあたしは本当に流されていた。
疲れた。
もういっそのこと、死んだっていい。
あたしには身寄りもなければ恋人もいない。
そしたらあいつら、今度こそブタ箱入り決定だ。
ざまぁみろ。
薄らいでいく意識の中で、最後に見えたのは夜空の星だった。
しかもこんな時に限って流れ星なんて見てしまう。
「マモル……さよなら」
あたしは無意識にそう呟いていた。