ゲイな彼と札束
夏、中野の駅前でタケシからかばってくれたとき。
優男のマモルがヒーローに見えた。
きっと頭を打ってイカれてたんだ。
よくよく考えればあいつはヒーローなんかじゃない。
ヒーローはピンチになった時に駆け付けるもの。
やられた後にやって来たんじゃ意味がない。
来るのが遅えんだよホモ野郎。
お前なんか、誰が頼りにするか。
一生男にでも飼われてろ。
報いだと思う。
殴られるのも、蹴られるのも。
あたしが傷つくのは、あたしも誰かを傷つけたからだ。
もしここで死んだとしたら、それは親父が死んだ分。
そう思えば納得できる。
だけどやっぱりこの世は理不尽にできている。
親父を殺したやつらがあたしに罰を下すなんておかしい。
でも、もうこれでいいだろ。
十分報いは受けてきただろ。
まだダメなのか?
二度と安息が訪れないんだったら、いっそのことここで死んでしまいたい。
もう誰も傷つけたりしないから、誰にも傷つけられたくない。
幸せになんてなれなくてもいい。
つまらなくたっていい。
ただ、穏やかに暮らしたい。
それができないというのなら、もう。