ゲイな彼と札束
病院には警察もやってきて、あの時河川敷にいたやつらは全員捕まったらしい。
そのうちの何人かは、とうとう刑務所に入ることになるだろう。
このことはニュースにもなって、テレビを見て知ったヒロキも見舞いに来てくれた。
病室は暇だ。
携帯をいじって暇潰しをすることもできないし、来客はありがたい。
「気ぃ付けろっち言うたやろ」
「気ぃ付けたってこうなったんよ」
店に乗り込まれて逃げようがなかった。
「でもまぁ、生きててよかった。ほんと」
ヒロキは足のギブスをコツンと弾き、眉間にしわを寄せる。
そんな顔をしてほしくなくて、あたしは明るく振る舞う。
「あはは。ここまでやられたら、もう次はないって。あいつらムショ行きやし、これ以上悪いことも起こらんやろ」
ヒロキは呆れたようにため息をつく。
「どうせお前も煽るようなこと言うたんやろ」
「えへ、バレた?」
「変わっとらんな、その性格」
アウターの袖口からタトゥーがチラ見えしている。
ヒロキだって、不良に向かない優しい性格は中学時代から変わっていない。