ゲイな彼と札束
「お前っ! 投げんなよ。一つ100万だぞ」
初めて見た札束に興奮しているあたしは、思わず声をあらげてしまう。
だけどマモルは情けなく「ははっ」と笑い、反省の色を見せない。
捨て犬野郎に笑われたあたしは悔しくなった。
どんだけ金持ちなら100万を粗末に扱えるんだよ。
「諭吉に失礼だろ」
「はは、そうかな」
「あたしなんて樋口なんとかを1枚しか持ってねーんだぞ」
「樋口一葉ね。覚えてあげなよ。サエこそ、彼女に失礼でしょ」
マモルが簡単にテーブルを片付けると、週刊誌の下から黒い灰皿が出てきた。
吸い殻は入っていない。
傷も汚れもない、真新しいものだ。
マモルは最後に3つの札束をトントンと揃え、まとめてポンとあたしの太股に乗せてきた。
「これ、全部あげるよ」
「はぁっ?」