ゲイな彼と札束

ヒロキは鼻をすするあたしの頭をわしわし撫でて、そっかとだけ呟いた。

まったく自分が情けない。

逃げたくせに未練がましいったらありゃしない。

2ヶ月離れたくらいじゃ、恋心はなくならないらしい。

もう二度とマモルと会うことはないのに、あたしはこの気持ちをどう処理したらいいのだろう。

「ごめん。ブサイクな泣き顔晒して」

「話せば楽になることもあるんやし、いくらでも話しぃよ。俺が適当に聞いちゃる」

「適当にかよ」

優しくしてくれるヒロキにさえマモルの影を感じ、あたしはまたキュッと胸を詰まらせた。

命がけのハードな戦いを終えたばかりで、よっぽど弱っていたんだろう。

涙を堪えたり、漏れてしまったのを拭ったりするのに忙しかったあたしは、病室の前まで来ていたのに入室することなく去った人間に、気付くことができなかった。




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