ゲイな彼と札束

ヒロキの温かい手が背中を這う。

肋骨にヒビがあるためコルセットでガッチリ固定されているが、コルセットの上からでも手の熱は伝わってきた。

「何気にお前も彫っちょるやん」

「バレてたか」

口では一言も言わなかったのに。

「店に来たときとか病院で少し見えた。お前もドMやぞ」

ヒロキは笑ってコルセットを弾いた。

あたしも笑いたかったが、笑うと肋骨が痛む。

喋るだけでもたまに痛むことがあるけど、そこまで弱っていると思われたくない。

「あーあ。こんなもん剥がしてしまいたい」

コルセットをクイクイ引っ張るこいつをペシッと小突く。

「やめてや。あたしの肋骨守っちょるんやから」

「せめて脚だけならなぁ。ヤれたのに」

なるほど、このコルセットはあたしの貞操をも守っているのか。

「アホか。鬼畜か」

「鬼畜なら肋骨やっててもヤっちょるわ。俺はおっぱいがないと燃えないの」

ナイスコルセット。

やはりお前のおかげで、あたしの貞操と乳は守られた。

ヒロキはベッドにごろんと寝転がった。

隙あらば手を出すぞ、というこのスタンス。

年頃の男とは本来こうあるべきだ。

やっぱり何もしないマモルがおかしいんだ。

ゲイなんだから、相手が男ならそうなるのかもしれないけど。

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