ゲイな彼と札束
「あたし、中学時代もヒロキに助けられてばっかやったなぁ」
ヒロキはよくアザを作るあたしを心配してくれていたし、命の危機を感じた日は匿ってくれたこともある。
無実の罪で校長室に呼び出されたときなんかは、口答えしたあたしにビンタした教師を殴り返してくれたっけ。
「そうだっけ?」
「色々思い出してきた」
「サエはヤンチャやったなぁ」
「お前もやろ」
あたしとヒロキは学校の厄介者で、サボるときも怒られるときも大体一緒だった。
友達らしい男友達はヒロキただ一人だったような気もする。
「ったく、俺に何も言わずに東京なんか行きやがって」
「必死やったんよ」
「俺の気持ちも知らないで」
「気持ち?」
勢いよく起き上がったヒロキ。
ムッとした表情をしている。
「まさかお前、忘れたんか?」
「何を?」
首をかしげたあたしを見て、ヒロキはガックリうなだれた。
「勇気を出して告白したのに……」
「え、嘘。そんなの聞いちょらんし」
告白なんて全然記憶にない。
ていうか、あたしはまだ、人生で一度も告白なんてされたことがないはず。
「はぁっ? 俺は言うたぞ、卒業式の日に」