ゲイな彼と札束
あたしは身を屈めてそれを取ろうとしたが、腕を伸ばすと肋骨が痛む。
「いてて……」
「あーもう、怪我人はじっとしちょれよ」
代わりにヒロキが袋を拾った。
ガサガサと音が響く。
「何の本?」
痛む部分を自分の手で撫でながら尋ねると、ヒロキの厳つい顔が更に厳つくなっていた。
「何やこれ……」
低い声でそう漏らし、袋ごとこちらへ寄越してきたヒロキ。
あたしは訝りつつ受け取る。
袋をひっくり返し、中身をベッドに転がした。
パサッ パサッ
軽い音を立てて現れた二冊。
いや、正しくは二つの札束だ。
見覚えのある諭吉が200人、渋い顔をしてあたしを見ている。
「マモルだ」
「え?」
「マモルが来たんだ……!」
この金額。
そうとしか考えられない。
あたしは札束を三つあげると言われて、一つだけ受け取った。
残りの二つが、今ここにあるのだ。
何らかの形であたしの事件を知ったからなのか、それともたまたまなのかはわからない。
でも、きっと。
途端に目頭が熱くなる。