ゲイな彼と札束
「サエのことはニュースになったからな。名前をネットで調べれば、ニュースにたどり着く。文面からここの市くらいまではバレるやろうし」
ネットで検索って……それで住所までバレたりはしないはず。
さすがにそれほどの個人情報は守られるべきだ。
それとも、マモルが金にモノを言わせてあたしを探したとでもいうのか。
ありえない。
だってそこまでする動機が思い当たらない。
あいつはあたしに特別な感情なんて抱かないはずだ。
マスコミを黙らせるための彼女役だって、女なら誰でもよかったはず。
今ごろきっと別の女があたしの後釜を務めている。
そう思いたいのに……。
「クソホモ野郎が」
呟いたらますます泣きそうになった。
鼻の奥がツンとする。
こんなときに、あたしが弱っているときに、影なんて見せんじゃねーよ。
また勘違いするだろうが。
もしかしたら、あたしは愛されてるんじゃないかって。
「200万の現ナマなんて初めて見たわ。そいつ、どういうつもりで持ってきたんやろな」
ヒロキが少し遠慮がちに札束を手に取り、それらが本物であるか確かめるように側面をパラパラ指でなぞる。
そして本物であると確信すると、マモルがしたみたいにポイと放った。
諭吉の微妙な表情が歪んで見えてきた。
「泣くほど好きなんか? そいつのこと」
「え?」
涙は溢れてしまっていたらしい。
「中学の時からどんなにボコられても泣いたりせんやったお前が、そのゲイのことになるとピーピー泣いとる」