ゲイな彼と札束

アパートの階段を降りるところから難関だった。

普段なら数秒で降りれる階段をゆっくり慎重に降り、広い通りへガツガツ進む。

空車のタクシーが見えたら松葉杖を上げてアピール。

「バスターミナルまで」

「かしこまりました」

バスターミナルまでは早かった。

しかし、さすがは田舎だ。

バス乗り場まで来たはいいが、空港行きは5分前に出たばかりで、次のバスまで15分待ち。

もどかしい気持ちでベンチで休憩し、やっと来たバスに乗り込んだはいいが、直通ではなく路線バスのため、なかなか到着しない。

時間が迫っている。

一秒一秒が速い。

こんなことなら、いくら払ってでもタクシーで向かえば良かった。

ママは1時の便だと言っていた。

携帯を使って調べてみると、1時ちょうどに羽田行きの便がある。

マモルはこれに乗るはずだ。

手荷物検査を通過して、12時45分ごろまでに搭乗口にいなければならない。

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